
サステナブルな未来を可能にするサーキュラーエコノミー

循環型経済の実現に向けた新たなアプローチ
持続可能な社会の実現に向け、世界では「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への転換が加速しています。
これまでの「つくって・使って・捨てる」直線型の経済から、資源を何度も循環させる仕組みへと変化する中で、企業には新たな価値創出と競争力強化のチャンスが広がっています。
当コラムではその背景や意義、そして企業が実践できる具体的なアプローチと最新動向について解説します。
目次
1.持続可能な社会形成に向けて
サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、「モノを捨てず、再利用・再設計・再生産する」ことを通じて、環境負荷を抑えながら新たな経済価値を創出する仕組みです。
これまでの社会は、「大量生産・大量消費・大量廃棄」というリニア(線形)型経済の上に成り立ってきました。

出展:リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの概念(環境省)
この構造は短期的な経済成長を支えた一方で、資源の枯渇や気候変動、廃棄物問題といった地球規模の課題を加速させてきました。こうした問題を根本から見直し、経済成長と環境保全の両立を実現する新しい仕組みとして注目されているのが、サーキュラーエコノミーなのです。
2024年には国としてサーキュラーエコノミーは地方創生と経済成長を同時に実現する取り組みであるとして、循環経済に関する関係閣僚会議が開催されました。
この中で企業と自治体の協働事例が紹介されるなど、官民一体での取り組みが加速しています。
参考リンク:内閣官房「循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行加速化パッケージ試作集」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/economiccirculation/pdf/shisaku.pdf
2.サーキュラーエコノミーと従来の3Rの違い
サーキュラーエコノミーとは、製品・部品・資源を「使い捨てる」のではなく、できる限り長く循環させ、再利用・再設計・再生産する経済の仕組みを指します。
「循環する経済」とも言い換えられ、従来の「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の枠を超え、製造・流通・消費・回収といったサプライチェーン全体を見直す包括的な経済システムです。
この発想の原点は、「自然界には廃棄物が存在しない」という考え方です。
落ち葉が土に還り、また新しい命を育むように、人間社会の経済活動も「資源が循環し続ける」仕組みへ転換しようというのがサーキュラーエコノミーの思想です。
つまり、サーキュラーエコノミーは単なる「環境施策」ではなく、企業戦略・ビジネスモデル変革そのものなのです。

3.サーキュラ―エコノミーに取り組む3つのメリット
サーキュラーエコノミーへの転換は、単なるCSR活動ではありません。
先述の通り、企業の競争力を左右する経営戦略になりつつあります。
理由は主に以下の3つです。
① ESG・サステナビリティ評価の向上
投資家や金融機関は、環境負荷の低い企業を高く評価する傾向が強まっています。特に「資源循環率」「廃棄物削減率」はESGスコアやCDP評価に直結する指標となっています。
リサイクル率の向上や廃棄物削減だけでなく、気候変動や資源枯渇をはじめとした深刻化する環境問題への解決手段として資源の持続可能な利用・サプライチェーン全体の透明性など、国際的な報告基準(GRI※・CSRD※)においても重要な指標とされています。
※GRI(Global Reporting Initiative):サステナビリティに関する国際基準や情報開示の枠組みを策定している国際的な非営利団体。
※CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive):EUが企業のサステナビリティ情報開示を強化するために導入した指令。
② 資源・エネルギーコストの高騰リスク削減と経営効率の向上
世界的な資源需要の増加により、様々な業界にて原材料コストが上昇しています。
再資源化や再利用を進めることで、原価の安定と調達リスク軽減を図ることができます。
また、資源を再利用・再設計することで、原材料調達コストを大幅に削減できます。
不確実性が高く将来の予測が困難な時代といわれる今、サーキュラーエコノミーの考えを事業に取り込むことにより、資源の価格変動リスクの低減や安定調達が可能になります。
さらに、廃棄物管理をDX化することで、データをリアルタイムで分析・最適化する事ができ、物流や処理コストの最小化も実現できます。
③ 新規ビジネス・市場機会の創出
リサイクル材・再生素材・シェアリングビジネス・リペアサービスなど、循環経済から新しい産業が次々と生まれています。日本でも、建設廃材を再利用した家具ブランドや、リサイクル素材を活用したスタートアップが急増しています。
サーキュラーエコノミーの実践は、単なる廃棄物削減の枠を超え、新たなビジネスモデルの構築による競争優位性の確立や、事業の持続的成長を支える「価値の再定義」なのです。
4.サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル
上述の通り、サーキュラーエコノミーへの移行は、環境面だけでなく経済面でも大きなメリットをもたらします。
2023年、経済産業省が発表した「資源循環経済政策の現状と課題」によると、サーキュラーエコノミー市場として2030年までに全世界で4.5兆ドル(約700兆円)、日本だけでも約80兆円の市場規模を見込んでいます。
2024年に環境省により取りまとめられた第五次循環型社会形成推進基本計画中でも「循環経済を国家戦略に」と、強調される等、今後さらなる成長が期待できる市場といえるでしょう。
参考リンク:経済産業省「資源循環経済政策の現状と課題」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/001_05_00.pdf
参考リンク:環境省「第五次循環型社会形成推進基本計画」
https://www.env.go.jp/content/000242562.pdf
以下に5つのビジネスモデル例をご紹介します。
① サーキュラ―型のサプライチェーン(循環サプライ)
原材料や資源の調達の場面で、回収・再利用しやすいものを採用するモデルを指します。
再生可能エネルギーや生分解性の素材の採用といった形で既存ビジネスに取り入れていくことが可能なアプローチです。
② 回収とリサイクル
寿命を迎えた製品を回収し、再度質の高い原材料として製造サイクルに戻し、より高い付加価値を生み出すモデルです。
マテリアルリサイクル、水平リサイクル、広域認定制度やプラスチック新法を活用した回収の取り組みもこちらのモデルに該当します。
③ 製品寿命の延長
メンテナンス、修理、改修などの手段を通じて、製品を(本来の目的に沿って)可能な限り長く使用できるようにデザインするビジネスモデルです。部品単位での二次使用や再販やリノベーションなどが含まれます。
④ シェアリング・プラットフォーム
これまでの「所有」の概念を超え、モノや資産の共同利用によって、需要を持っている人が、需要があるタイミングで製品やサービスを利用するモデルです。
⑤ サービスとしての製品
利用者が製品やサービスを利用した分にのみ料金を払います。レンタル、リース、サブスクリプションといった形態がこのモデルに該当します。このモデルでは製品の所有権を提供側が保持したままのことも多く、回収やリサイクルなどにもつながりやすいことが特徴です。
5.脱炭素経営には事業のサーキュラー化が必要
従来型のリニアエコノミーでは、経済成長すればするほど環境負荷が加速し資源不足が深刻化していくため、持続可能ではありません。
一方、サーキュラーエコノミーは環境負荷が低く、地球環境の再生能力に収まるエネルギーと資源を使って経済成長できる経済システムであるため、持続可能な社会を実現させるためには重要な考えとなります。
また、近年、GHG排出量の削減など企業の脱炭素対策の要請が高まっていますが、GHG排出量の削減においてもサーキュラーエコノミーの必要性が訴えられています。サーキュラーエコノミーは、企業の脱炭素対策にも大きく貢献します。
今後、ますます企業は、サーキュラーエコノミーの考えを事業に取り込み、サーキュラー化させていく、つまり循環型ビジネスへのシフトに取り組むことが重要になると言えるでしょう。
6.日本企業が直面する課題と転換の方向性
日本企業がサーキュラーエコノミーに取り組む上で、まず課題となるのは「リニア型経済」から抜け出せていない構造です。製造から販売、消費、廃棄までの流れが依然として“一方向”であり、リユース・リサイクル・リペアなどの循環工程が十分に組み込まれていません。
サーキュラーエコノミーは「環境対策」ではなく、新たな価値創造と競争力強化の鍵として位置づけることが重要です。
以下に課題と対策の例を挙げます。
サプライチェーン全体の管理の難しさ
多くの企業では、一次取引先までは管理できても、その先の処理工程までは把握が難しいのが現状です。
その結果、「どこで・どのように再資源化されているのか」を追跡できず、ESG報告や認証取得の妨げとなっています。
これらの対応策として、電子マニフェストのデータ連携やブロックチェーン技術の導入によるトレーサビリティ(追跡性)強化が進んでいます。
再資源化のコスト負担
再生材の加工コストや分別コストが高く、経済性が課題となるケースも。
しかし近年は政府の補助金制度(脱炭素経営支援、資源循環促進補助金など)の充実も進んできていて、これらを活用する企業が増えています。
サステナ経営を「コスト」ではなく「投資」と捉える発想転換が求められます。
組織内外での意識・文化の醸成
サステナ部門だけでなく、購買・製造・営業・人事を巻き込んだ全社的な取組が不可欠です。
特に製造業では、設計段階から「リユース可能な部品設計」や「解体しやすい構造」を採用するなど、デザイン思考の導入が求められています。
また、産官学が連携した地域循環型の経済圏の構築も重要なポイントになります。
7.今後の展望〜企業に求められる「共創」と「再設計」
サーキュラーエコノミーの推進は、企業単独では限界があります。
製造業者・再資源化業者・行政・教育機関などが連携し、地域単位で循環のエコシステムを作ることが求められます。
2023年3月には経済産業省が策定した「成長志向型の資源自律経済戦略」に基づき、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、産官学の連携を促進するためのパートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」が設立されました。当社も参画会員としてサーキュラーエコノミーの実現に向けて先駆的に取り組んでいます。
また、製品設計段階から「回収・再利用」を前提としたサーキュラーデザイン(Circular Design)への移行も進むでしょう。欧州では既に「製品パスポート制度(Digital Product Passport)」が導入され、素材・生産・廃棄情報のデータ化が義務化されつつあります。日本企業も、これに対応できる「データ連携型の循環モデル」構築が急務です。
参考リンク:サーキュラーパートナーズ(Circular Partners)公式サイト
8.循環が生む”競争力”の時代へ
サーキュラーエコノミーはもはや「環境貢献」ではなく、経営の質を高め、社会全体の持続性を確保するための新しい経済の形、「企業の持続的成長戦略」です。限りある資源をどう活かし、どう次世代へ引き継ぐか。その発想転換が、これからの企業価値を左右すると言っても過言ではありません。当社は、企業の資源循環パートナーとして、「廃棄を減らす」から「価値を循環させる」ステージへの移行を支援します。
循環を経営に組み込み、サステナブルな未来を共に創りあげましょう。
9.まとめ
サーキュラーエコノミーの実現には、単発的なリサイクル施策ではなく、廃棄物の発生から再資源化までを一貫して“循環の仕組み”として構築することが重要です。
当社は、産業廃棄物管理・資源循環の専門パートナーとして、
発生源から最終処分までのプロセスの可視化
再資源化・再利用の促進
GHG排出量の把握と削減支援
再資源化事業者との連携構築
を通じて、企業のサステナ経営をトータルで支援しています。
貴社の廃棄物管理や再資源化の取り組みを強化したい場合は、ぜひ一度ご相談ください。
最適な循環型スキームの設計から運用まで、貴社の現場に合わせてサポートいたします。
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