
廃棄物データの見える化で、オフィスビルや商業施設の価値はどう変わるのか ― 管理会社が押さえておくべき新しい運用の考え方 ―

廃棄物データの見える化で、オフィスビルや商業施設の価値はどう変わるのか
近年、テナント企業による環境情報開示への要請の高まりや、ビルオーナーを中心とした各種環境認証への関心の高まりを背景に、オフィスビルや商業施設においても、廃棄物量を把握・説明できるかどうかが重要になる場面が増えています。一方で、商習慣上、管理会社が廃棄物を一括で処理しているケースが多く、テナントごとの廃棄物データを把握できていないのが実情です。本記事では、廃棄物管理の現状と課題を整理したうえで、廃棄物データの見える化が、オフィスビルや商業施設の価値向上にどのようにつながるのかを解説します。
目次
現状|なぜ今、管理会社に「廃棄物データ」が求められるのか
これまで、オフィスビルや商業施設における廃棄物は「日常的に処理されていればよい業務」の一つとして扱われてきました。しかし近年、その位置づけは大きく変わりつつあります。背景にあるのは、テナント企業側の環境対応への意識変化と、ビル選定基準の変化です。
テナント企業から高まる情報開示ニーズ(環境・ESG・サステナビリティ)
多くの企業が、環境配慮やESGへの取り組みを対外的に説明する立場になっています。その中で、オフィスビルや商業施設などの入居先ビルでの廃棄物処理状況について、管理会社へ確認が入るケースも増えています。これは、温室効果ガス排出量(Scope)を算定するにあたり、廃棄物の発生量や処理方法など、自社だけでは把握できない情報が必要になるためです。
実際には、管理会社に対して次のような点について確認されることが多くあります。
たとえば、
・廃棄物はどのように分別・処理されているのか
・自社が排出している廃棄物量を把握できるのか
・管理会社として、どの程度まで情報を管理しているのか
といった内容です。必ずしも詳細な数値提出を求められるわけではありませんが、「聞かれたときに説明できる状態かどうか」が、管理会社にとって重要になっています。
廃棄物量は「見えないコスト」から「説明責任のあるデータ」へ
従来、廃棄物処理費用は共益費の一部として扱われ、その内訳や根拠まで深く意識されることは多くありませんでした。
しかし現在は、処理費用が適正なのか、特定のテナントに廃棄物量の偏りが生じていないかなど、こうした点について、管理会社として一定の説明を求められる場面が増えています。つまり廃棄物量や処理状況は、これまでのように「見えにくいコスト」として扱われるものではなく、把握・整理したうえで「説明責任を果たすべきデータ」へと位置づけが変わりつつあるのです。
建物選定において、共益費や環境対応が比較対象になりつつある現状
テナントがビルを選定する際の判断軸も、以前に比べて広がりを見せています。立地条件や賃料といった分かりやすい要素に加え、次のような点が比較対象として意識されるケースが増えています。
・共益費に含まれるごみ処理費の分かりやすさ
共益費の中には、日常的に発生するごみの回収・処理費用が含まれています。近年は、これらを単なる固定費として扱うのではなく、「どのようなごみを、どの程度処理している費用なのか」「金額は妥当なのか」を説明できるかどうかが重視されるようになっています。
・環境配慮への取り組み姿勢
自社で環境方針の策定や情報開示を進めるテナント企業にとっては、入居する建物側が必要な環境データを把握し、求められた際に適切に説明・開示できる管理体制かどうかも重要な判断材料になります。近年は、LEEDなどの環境認証を含め、建物全体の環境配慮の考え方や運用状況を重視する企業も増えており、廃棄物を含む環境対応がどのような方針で管理されているのかに目を向けるテナントも少なくありません。
こうした背景の中で、管理会社側が廃棄物の運用状況やデータを十分に把握できていない場合、テナント企業から求められる環境情報や説明に対応することが難しくなります。データが点在していたり、「把握していない」「説明できない」という状態そのものが、管理体制への不安につながりかねません。
その結果、廃棄物管理の不透明さが、建物全体の評価や信頼性に影響する可能性もあります。だからこそ今、ビル管理会社自身が廃棄物データを整理・把握し、必要なときに説明・開示できる状態を整えておくことが求められています。
課題|「一次データ」の取得が難しい原因
テナント企業から廃棄物量の開示を求められても、管理会社側が対応できないケースは少なくありません。これは個別の管理体制の問題ではなく、従来のビル管理の商習慣や運用構造に起因するものです。
商習慣上、管理会社が廃棄物データを持たない前提になっている
多くのビルでは、廃棄物は各テナントからゴミ庫に集められ、ビル全体として処理業者に引き渡されます。このため、「どのテナントが、どれだけの廃棄物を排出したか」を管理会社が把握・管理する前提になっていません。管理会社はあくまで回収・処理の調整役であり、個別データを持たない運用が一般的でした。
共益費に含まれる廃棄物費用は按分処理が一般的
共益費に含まれる廃棄物処理費用は、実際の排出量ではなく、床面積や契約条件などを基準に按分されるケースがほとんどです。そのため、請求金額の算出はできても、「実際にどれだけの廃棄物が発生したのか」という数量ベースの説明ができない構造になっています。
こうした運用の結果、テナントごとの廃棄物量を示す一次データが残っていません。後から廃棄物量の提出を求められても、概算や推計での対応にならざるを得ず、正確なデータとして提示できないのが実情です。このように、廃棄物量を提示できない背景には、管理会社個社の問題ではなく、長年続いてきたビル管理の商習慣と運用設計の限界があります。
商習慣上「できなかった」本当の理由
テナントごとの廃棄物量を把握しようと考えても、従来の運用では実務上の壁が高く、現実的な対応が難しいのが実情です。ここでは、管理会社が直面してきた具体的な課題を整理します。
テナントを排出事業者とする場合、実務負担が大きすぎた
本来、産業廃棄物については、各テナント企業が排出事業者としてマニフェストの登録や管理を行う必要があります。しかし実際には、以下のようなハードルがありました。
- 廃棄物の区分(産業廃棄物・事業系一般廃棄物等)が分かりづらい
- 法令やマニフェスト制度への理解がテナント側に求められる
- 担当者の異動や入れ替わりによる運用の不安定さ
その結果、テナントごとに対応を求めることは現実的ではなく、管理会社側で一括して対応せざるを得ない運用が定着してきました。
運用構造上、テナント別の廃棄物量を集計できなかった
もう一つの大きな壁が、日常運用における構造的な問題です。
多くのビルや商業施設では、清掃会社や各テナント企業の従業員が、発生した廃棄物を直接ゴミ庫に持ち込む運用が一般的です。この時点で、廃棄物はテナントごとに区別されることなく集約されます。一度ゴミ庫に集められてしまうと、その場で計量や記録を行わない限り、後から「どのテナントが、どれだけ排出したか」を把握することはできません。つまり、テナント別の集計は、運用構造上そもそも不可能な状態だったと言えます。このように排出量をテナント単位で把握できない以上、実際の排出量に基づいて処理費用を算出・請求することもできません。

廃棄物データが「見える化」されたとき、管理会社が得られるメリット
廃棄物量を説明できることが、建物の価値になる
テナント企業が建物を選ぶ際、立地や賃料に加えて、環境配慮への取り組み姿勢を重視するケースが増えています。特に、自社で環境方針の策定や情報開示を進めている企業にとっては、入居後に必要となる環境データを建物側が把握・説明できるかどうかが重要な判断材料となります。廃棄物量を把握し、テナント別・種類別に説明できる状態であれば、「どのような考え方で廃棄物を管理している建物なのか」を具体的に示すことができます。これは単なる管理業務の改善にとどまらず、環境配慮型ビルとしての評価や信頼性の向上につながります。
廃棄物処理費用の透明性が高まる
廃棄物量が可視化されることで、処理費用の根拠も明確になります。これまで床面積按分や一律負担になりがちだった費用についても、実態に即した説明が可能となり、「なぜこの金額なのか」をテナントに対してきちんと説明できる状態が生まれます。従来の仕組みでは、テナントが廃棄物削減に取り組んだとしても、処理費用が直接下がらないケースが多く、行動とコストの関係が見えにくいという課題がありました。一方、廃棄物量を把握し、従量に基づいた考え方を取り入れることで、「ごみを減らせば費用も下がる」という分かりやすい関係が生まれます。その結果、テナント側も分別の徹底や廃棄物削減に積極的に取り組みやすくなり、コスト面だけでなく、廃棄物発生抑制やリサイクル促進といった環境面での効果も期待できます。
環境認証(LEED認証等)への現実的な対応が可能に
LEED認証をはじめとする環境認証は、単なる環境配慮のアピールではなく、建物の価値や競争力を客観的に示す指標として、デベロッパーやビルオーナーから注目されています。環境対応を重視するテナントの誘致や、投資家・金融機関への説明の場面でも、認証の有無が評価に影響するケースは少なくありません。一方で、こうした認証では、廃棄物量やリサイクル率などの定量的な運用データが求められる項目も多く、従来のように廃棄物の実態を把握できていない状態では対応が難しいのが実情でした。
廃棄物データを日常的に把握・蓄積できる仕組みがあれば、認証取得を「特別な対応」ではなく、日々の運用の延長線上で検討できる現実的な選択肢に変えることができます。これは、将来的な認証取得や環境対応を見据えた建物運営においても、大きな強みとなります。
オフィスビルの廃棄物データを見える化する運用方法
ここまで見てきたように、テナント別の廃棄物量を把握し、説明可能なデータとして管理することは、従来の商習慣や運用構造の中では非常に難しい課題でした。しかし当社では、運用設計とシステムを組み合わせることで、現実的に「できる」形を構築しております。その一例が、複合施設「BLUE FRONT SHIBAURA」で実現されている廃棄物管理の運用です。
テナントを排出事業者とした運用設計
BLUE FRONT SHIBAURAでは、入居する各テナント企業をそれぞれ排出事業者として位置づけ、「誰が・どの廃棄物を・どれだけ排出したか」という一次データを取得できる運用が採用されています。従来のように管理会社が一括で対応するのではなく、排出主体を明確にしたうえで、管理会社はその運用を支える立場に回ることで、法令対応とデータ取得の両立を実現しています。
計量機とシステムを組み合わせた日常運用
実際の現場では、テナントが廃棄物をゴミ庫に持ち込む際に、
- テナントコードを読み込む
- 廃棄物の種類を選択する
- 計量機に載せて重量を計測する
というシンプルな手順で、排出量を記録します。
この計量データは計量機と連動したクラウド上の管理システム(エコロジネットプラス)に自動で連携され、産業廃棄物の場合は電子マニフェストの登録まで行います。一方、産業廃棄物以外の廃棄物についても、重量データとしてエコロジネットプラスで一元管理が可能です。これにより、日常業務の負担を大きく増やすことなく、テナント別の一次データを取得する運用が成立します。
オフィスから日常的に発生する廃棄物については、従業員が直接ゴミ庫へ持ち込むのではなく、清掃会社が各フロア・各テナントごとに回収する運用が一般的です。この点も、テナント別の廃棄物量を把握するうえで重要なポイントになります。本事例では、清掃会社の運用を前提に、「どのテナントのごみか」を分けた状態で回収し、その単位ごとに計量を行う仕組みを構築しています。清掃会社が回収した廃棄物は、テナント単位で計量機に載せて重量を記録し、そのデータをシステムへ連携します。
このように、テナント自身が直接計量作業を行わなくても、清掃会社の回収フローに計量工程を組み込むことで、オフィス由来の廃棄物についても一次データを取得することが可能になります。そのため、テナント・管理会社・清掃会社それぞれの業務負担を大きく増やすことなく、実運用に即した形でデータの見える化を実現しています。
管理会社主導で実現できる新しい廃棄物管理の形
この運用の重要な点は、テナント任せでも、管理会社任せでもなく、実運用に即した全体設計を行うことで過剰な負担なく成立している点です。商習慣や現場運用を無視して理想論を掲げるのではなく、実際のビル運営に即した形で「できなかったことをできるようにする」。このような仕組みは、今後、廃棄物データの見える化が求められる時代において、ビル管理会社にとって大きな差別化要素になっていくといえるでしょう。

まとめ
オフィスビルや複合施設の廃棄物管理は、これまで商習慣や運用構造の中で「分からなくても仕方がないもの」とされてきました。しかし近年では、テナント企業からの環境情報開示の要請や、共益費・清掃費に対する説明責任の高まりにより、廃棄物量も「説明できるデータ」であることが求められています。一方で、単に可視化を目指すだけでは、テナントや現場の負担が増え、実運用として成り立たないケースも少なくありません。重要なのは、日常の業務フローを大きく変えずに一次データを取得できる仕組みを設計することです。
今回ご紹介したように、テナントを排出事業者とした運用設計や、計量機・システム・清掃会社の回収フローを組み合わせることで、これまで「できなかった」テナント別の廃棄物管理を現実的に実現できます。廃棄物データを把握し、必要なときに説明できることは、コスト管理にとどまらず、建物の信頼性や選ばれやすさを高める要素にもなります。
「自社の建物でも実現できるのか」「今の運用でどこまで対応できるのか」そう感じた場合は、まずは現状整理からでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
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